岐阜・愛知レトロアーケード探索記(1) 養老ランド
ずいぶんと、こちらを放置してしまいました。
なので久々に書きますよ。
今年(2013年)4月に行っていた
レトロアーケードゲームの探索記でも残そうかと思います。
色々回ったので、何回かに分けて上げていきますよー。
思い立ったきっかけは、1台の体感ゲーム機でした。
セガの体感ゲームが、ゲーセンの華形だった1980年代。
「ハングオン」「アウトラン」「スペースハリアー」に「アフターバーナー」…。
そんなセガ体感ゲームの系譜に
「サンダーブレード」という作品があります。
2Dステージと3Dステージをミックスした、挑戦的なゲーム構成。
操縦桿型のスティックを持つ、ヘリを模した漆黒のマシンフォルム。
そして自動ではなく、人力で稼働させる体感ゲームとしては変わり種の機構。
前述の名作たちと比べればヒットとはいきませんでしたが、
それでもメガドライブのローンチタイトルとして本作の移植版が出たりと
知名度はそれなりに高いゲームでした。
しかし、現役稼働している「サンダーブレード」の筺体は今や、
日本に2台しか存在しないと言われています。
1台は、北海道に。
そしてもう1台は、岐阜の遊園地「養老ランド」に。
北海道はともかく、岐阜なら自分にとっては十分見に行ける範囲。
となれば、取るべき選択肢は1つ。
いつ無くなるか分からない、貴重な筺体が生きているうちにプレイをしに行かねば!
ついでに岐阜県内や、愛知あたりのレトロゲームも探さない手は無いよね!
そんなわけで急遽、1泊2日の
レトロアーケードゲーム探索の旅は幕を開けたのでした。
思いつきにも程がありますが、まぁ以前にレトロゲームコレクターとして
ファミコンソフトを探し倒していた時からの仕様ですので。
三つ子の魂百までとは、よく言ったものです。
2013年4月、ある日曜日の午前。
僕は家族連れでにぎわう…とはとても言えないものの
古き良き遊園地の雰囲気をいっぱいに残した「養老ランド」に、足を踏み入れました。
いや本当、昭和の空気で落ち着くんですよここ。
今時、よく分からんけど巨大なロボとか無闇にカラフルなテントとか
残している遊園地なんて、そうそうありません。
なるほど…。これなら目的のゲームコーナーも
時が止まった空間であったとしても、おかしくはない…。
遊園地を一回りして、いよいよゲームコーナー内部へ。
おおお! どれよりも目立つ位置に体感ゲームの元祖「ハングオン」が!
もうすぐ発売から30年経つとは思えないほど、綺麗に整備された筺体。
プレイした感じ、不具合のある部分もまったく無いようで
大事にメンテナンスされながら、今も現役を貫いていることが分かります。
そしてお目当てのマシン、「サンダーブレード」。
画面、サウンド、スロットル含めてこちらも不具合はまったく無し!
2Dから3Dへのスムーズな場面転換も、後部から流れる大音量のBGMも
すべて当時のまま、楽しむことができます。
…もはや現役稼働していること自体が奇跡的だというのに、完璧なコンディションです。凄ぇ。
他にもこのゲームコーナーには、レアな筺体が満載です。
いくつかを紹介していきましょう。
「プロップサイクル」。
自転車のようにペダルを漕ぐインターフェイスが特徴の、90年代ナムコ作品。
一時期はどこでも見かけるマシンでしたが、すっかり見かけなくなりましたね…。
「オペレーションサンダーボルト」。
ガンシューティングの名作「オペレーションウルフ」の続編です。
このジャンルで2人同時プレイを初めて実現した、
エポックメイキングな作品でもありました。
「バブルトラブル」。
前作「ゴーリーゴースト」譲りの、ジオラマとCGが融合したグラフィックが
不思議な画面の奥行きを実現していて、驚かされます。
ビデオゲームとエレメカの中間といえる作品…なのかな。
ここからはエレメカです。
「対抗やまのぼり競争」。
エレメカの名機「山のぼりゲーム」を、対戦できる形にしたもの。
その分マシンが大きく、見かけることが少ないものです。
こちらも、こまや製。
「ポートクレーン」。
キャンディをアームですくい取るマシンです。
「お山のクレーン」「キャンディクレーン」など
まったくシステムが同じの兄弟機種(?)も多い、こまやの代表作ですね。
昭和技研ことSHOKENの「ドリームチャンス」。
ルーレットのように回るランプを当たりに止めればいいのですが
狙ってもズレるのは「おしゃべりオーム」以来続く、エレメカの伝統。
プライズもなかなか味があります。
「UFOキャッチャーDXII」。
実はプライズゲーム機がブームとなった、90年代初頭より前に発売された機種。
なので現役稼働しているマシンは、意外にも少ないのです。
BGMとしてずっと流れている「グリーンスリーブス」や「見つめていたい」を聴くと
ああ、ゲームコーナーに来たなぁ…と思いますよね。
このちょっと哀愁すら感じさせる音色がたまらんです。
そしてこれもゲームコーナーの定番。
「NEOプリント」。
SNK製であるため、アテナがずっとデモでマシンの紹介をしてくれるのですが
これがエンドレスで聞こえる光景は、至るところで見られました。
ちなみに養老ランドは、今年40周年だそうで
入口には、開業当時の電動木馬なども展示されていました。
…で、これを撮影している最中、どこからかこちらに呼びかける声が。
「お客さん、ヘリのゲームはプレイしました?」
声の主は、養老ランドの従業員さんでした。
どうやらこの古い電動木馬を撮影している怪しい男を見て、
レトロゲームを遊びに来た客だと判断された様子。
“ヘリのゲーム”とは言うまでもなく、「サンダーブレード」のことですね。
…ってことは、同じように「サンダーブレード」や「ハングオン」目当てで
ここを訪れる人も少なくないのでしょうか。
まさか従業員さんから「サンダーブレード」の話を振られると思っていなかったので
面食らったものの、これはマシンの詳細を聞く絶好のチャンス。
ということで、少しお話をうかがうことにしました。
従業員さんの話によると、「サンダーブレード」筺体は昔からあるもので
パーツの故障は遊園地内で修理しながら、稼働させ続けているとのこと。
ただ、筺体内のモニタだけは、代換が効かないらしく
もしモニタが映らなくなったら、その時はどうにもならない…のだそうです。
形あるものは、いつかは壊れる。
それはゲーム機に限らず、逃れることのできない運命です。
それでも訪れた人に、少しでも多く、長く楽しんでもらえるようにと
「サンダーブレード」筺体は、いや、おそらくここに置かれたすべてのマシンは
絶えずメンテナンスをされ、現役を保ち続けていたのです。
「あのマシン、音も綺麗に出てたでしょう」と聞かれた従業員さんの言葉は
ここまでメンテナンスし、稼働を続けてきた
技術者としての誇りすら思わせるものに、感じられました。
情熱を持ってゲームに携わるプロフェッショナルは、ここに確かにいるのです。
願わくば、すべてのマシンが1日でも長く稼働を続けられますように。
そう心から思い、養老ランドを後にしました。
次なる目的地、愛知県犬山市の「日本ゲーム博物館」を目指して。
続きます。