上海パチモノ探索ツアー(2) グレートモーメンツ

上海のオタク街を堪能し、次に向かった場所。
そこには電化品や玩具、日用品など多くの店が軒を連ねていました。
雰囲気としては戦後の闇市のようなスポットで、
関東の人なら上野のアメ横、関西の人なら神戸元町高架下(モトコ―)を思い浮かべてもらえれば近いかと思います。




一回りしてみるものの、残念ながらゲームを扱っている店は無い様子。
と思いきや、麟閣さんが電子機器を扱っている店に何やら交渉をされています。
ここにゲームソフトは影も形もないのですが…!?



まさかのカウンター下から、パチモノソフト出てきたー!
ブツはパチモノの代表格ともいえるin1系。
特有の安っぽいプラスチックのため、中には基板が外れてしまっているものすらありますが
それでも宝物をふいに見つけたかのような高揚感が、確かにありました。
何処から意外な成果が出てくるか分からない、これこそが探索の醍醐味!


なお価格は1本30元。日本円にすると500円程度と
古いものであることを差し引いても、日本では考えられないほどの投げ売り価格でした。







勢いに乗って次に向かったのは、観光客向けのお土産なども扱う4階建てのビル。
建物内に多彩な店がひしめき合う様子は、中野ブロードウェイに近い雰囲気でしょうか。
とはいえ、ここはアニメグッズは豊富なものの、ゲームは見当たらず。


個人的には、いかにも中国という感じのフリーダムなアイテム群が気になりました。
特に、くまモンが胸に刺繍されたクマのぬいぐるみは
「お前、クマのぬいぐるみとしてそれでいいのか…」と問い正したくなる他力本願っぷり。
コイツにもし意思があるなら、間違いなく既にアイデンティティが崩壊していると思います。











ここまでが午前中の出来事。
そう、見どころは非常に多かったのですが、実はまだ半日も経っていなかったのです。
午後に待っていたものこそ、今回のツアーのメインイベントでした。




ツアー主催である麟閣さんの知人と待ち合わせ、入ったのは広い部屋のある飲食店。
知人の方は、何やら荷物がパンパンに詰め込まれたバッグを持参されています。


まぁ今回のツアーの趣旨を考えれば、何となくカバンの中身は予想できることでしょう。
「そうか、様々なパチモノを手に取れる機会になるのかな?」と思っていたら…















いやいやいや!様々すぎ!
一体ここだけで何本あるんですかパチモノソフトが!?
恐ろしいことにこれでもごく一部で、無限の如くソフトが出てくるそのカバンは
さながらパチモノが当たり前に流通していた時代のアジア圏に繋がっている、四次元ポケットのよう。
せっかくだから、その中から気になったソフトをいくつか紹介していきましょう。






まずはこれ。「SUNMAN」。
サンソフトファミコン末期に開発を進めていたものの、結局世に出なかったタイトルです。
バットマン」に似たアクションですが、自在にステージ内を飛び回れるのが特徴。

「ギミック!」や「バトルフォーミュラ」でファミコン離れした技術を見せつけた当時のサンソフトらしく
音楽よし、当たり前に背景がラスタースクロールする演出よしと、お蔵入りになったのが不思議なくらいの出来です。
実はスーパーマンのゲーム化として開発が進められていたが版権が取れなかったとか、
開発に故・飯野賢治氏が関わっていたりとか、気になる逸話も多い1本。


ちなみに、世に出ていないはずなのにレトロフリークではタイトルが認識されたりします。
どういうことなの…。









お次はファミコン版「ファイナルファンタジーVII」。
そう、あのクラウド神羅カンパニーで真の300万本RPGな、あの有名作を勝手に移植したものです。
アンオフィシャル品とはいえ、ストーリーはきちんとオリジナル版をなぞっているようで
2Dの「FFVII」として普通に楽しめてしまうあたりが恐ろしいですね。


実はファミコン版「FFVII」は英語版と中国語版があり、
今回入手した英語版は、戦闘などのゲームテンポが中国版より段違いに早くなっていて
マニア間では「いい方のFFVII」と呼ばれている…のですが
何と今回出てきたものは、これまで誰にも知られていなかった第3のバージョンでした!
外見は同じように見えても、しれっと中身が違っていたりする、この予測不能ぶりはパチモノソフトならでは。
また1つ、深淵が口を開けてしまいましたね…。








こちらは「マリオ2」と「オールナイトニッポンマリオ」…のROM版。
ご存知の通り、両方ともリリースはディスクのみのはずなんですが、何故か確かに実在しているのです。
個人的にはこういう、本来ならあり得ない単品ソフトは心惹かれまくりです。








in1系も少しいってみましょう。288本入りのソフトです。
この手のin1ソフトは表記の本数通りにゲームが入っていることはまず無く、ダブりも日常茶飯事なのですが
驚くべきことにこのソフトは偽りゼロ! 本当に288タイトルのゲームが入ってます。



しかも「くにおくん」や「ダブルドラゴン」「高橋名人の冒険島」「忍者龍剣伝」などのシリーズは全部入り、
さらには勝手にされ移植された「サムスピ」や中国製の謎の対戦格闘、
「ジャッキーチェン」をマリオに書き換えた笑えるハックタイトルから
13日の金曜日」「ニュージーランドストーリー」などNESでしか出てない作品に、
知る人ぞ知る任天堂非公認ゲーム「メタルファイターμ」などまで含まれている、超豪華な内容。
これ1本あればしばらく遊ぶゲームに困らなさそうなin1ソフトでした。







最後に紹介するのは、マリオのドット絵が印象的な8in1。
入っているのは当然マリオ関連の作品ばかりなのですが、そのラインナップが中々にイカレてます。
海外でのみ発売された学習ソフト「Mario is Missing!」と「Mario's Time Machine」があるのは序の口。
残る6本は有志が改造し、ネット上で公開されたハックタイトルなのです。


そのうちの1本「スーパーマリオブラザーズスペシャル」は、
PC8801やシャープX1用に、任天堂から許可を得てハドソンが発売した移植版を
わざわざファミコンで再現しているという、素晴らしく技術と手間と情熱がかけられたタイトル。
実は今回のツアーに参加しておられた鉄工さんが、かつて制作したものなのだとか…。







気になるソフトは、参加者持ち込みによる携帯ファミコンで内容が確認され、
さらに前日ゲットされたゲームボーイソフトも即売が始まり、場は楽しくもカオスの極みに。
ツアーの締めくくりを飾るに相応しい、パチモノゲームの宴がそこには確かにあったのです。











パチモノソフトは、著作権的には非常に危ういものであるということは、前回も書いた通りなのですが
その分、未知の世界がいまだ果てしなく広がっているのも事実です。


かつてファミコンソフトを収集していた頃に味わっていた
「次はどんな知らないゲームに巡り合えるだろうか?」という思い。
それが久しぶりに甦ったことは、今回ツアーに参加した最大の収穫でもありました。





改めて、ツアーを企画された麟閣さん、
そして旅を共にした、ゲームを愛しすぎてる皆さんに、お礼を申し上げます。


いつかまた、アジアの何処かで逢えることを願って。
…なんとなく、そう遠い日のことではないような気もしていますが。