愛すべきバカを再び求めて

セガが90年代中盤にリリースしたレースゲーム「クールライダース」。
マイナーではありますが、自分にとっては忘れられない心の名作の1つです。

一応は「アウトラン」シリーズの系譜に名を連ねるこの作品。
特徴は、既に3Dポリゴン全盛だった時代に実写取り込みの2Dスプライトを採用していた点。
そして、舞台となる国や地域の特色を過剰なまでにクローズアップした、やりすぎな演出の数々にあります。


例えば日本なら、時速300km近いはずなのにニンジャが並走している、外国人が妄想したかのようなエセJAPANが展開、
スイスでは突然ブランコに乗った少年少女やセントバーナードが出現(ハ○ジ?)、
ポリネシアでは巨大タコが見守る中ビッグウェーブ内を走り、たまにサメに噛まれる、
アメリカ国内ですら、ワシントンではホワイトハウスに突っ込み、
ヒューストンに至っては途中で月へとワープした上、UFOから攻撃まで受ける始末です。


これらのバカ演出が全て、実写取り込みで展開されるのですから
そのビジュアルインパクトたるや、一度見たら脳裏に焼きつくほどの絶大さでした。
そう、一言で表すなら本作は「疾走感あふれるバカ」。
クールと呼ばずして、何と呼べと!?



しかし、本作は「アウトラン」シリーズとしてはあまりに異端すぎたのか、
発売当時から出回りの悪さは異常とも言えるレベル。一度も見たことない人も多いかと思います。
実際、自分の場合も90年代後半にボウリング場のゲームコーナーで遊んだのが、実際にプレイできた最後でした。








いつかもう1度、あのハチャメチャさを再び味わいたいと
レトロアーケードゲーム探索を趣味にして以降、かなり本気で探し回っていたのですが、まったく影も形も掴めず。
しかし、諦めなければ道は開けるもので、ついに現役稼働の情報を掴むことができました。
成田空港が近い千葉・八千代台にある
レトロアーケードゲームギャラリー「バック・トゥ・ザ・アーケード」さんに、あるという話なのです。








行くしか!それはもう何を置いてでも、行く以外の選択肢なんて無い!
自分が住む滋賀から、千葉までは約400km。だけど距離や時間なんて問題じゃない。
約20年ぶりの再会を心待ちに、2月のある日「バック・トゥ・ザ・アーケード」さんへ向かいました。
心躍らせ、はやる足取りを抑えながら店舗へ向かうと…




し…閉まってるー!?


そう、「バック・トゥ・ザ・アーケード」さんは土曜日と祝日が営業日なのですが
自分は何を勘違いしていたのか、日曜日に来てしまっていたのです…。


残念だけど、また関東に来た時に出直すしかないか…と、
自分の不覚っぷりを呪いながら帰途に着こうとした、その時。
ふと携帯を見ると、そこにはTwitterの通知が。

!!!!!!!
え?店の方が「来たけど閉まってて残念」とつぶやいていたのを見てくれていた?
しかも、今から来てもいい…と? マジで!?本当に!?
え…?ええええーーーー!!?



速攻で店まで駆けつけると、「せっかく遠くから来てもらったので」と寛大なお言葉をいただき
メンテナンス中の店内に、なんと本当にお邪魔させてもらえることに!
「バック・トゥ・ザ・アーケード」さん、本当に、本当にありがとうございました。
感謝の言葉をどれだけ並べても足りないほどの神対応に、それでも今一度、心からお礼を伝えさせて下さい。









まさかの忘れられない思い出をここで1つ増やし、遂に果たせた約20年振りの再会。
嗚呼…これだ!
操るマシンが普通のバイクに飽き足らず、スクーターや自転車まであるマシンセレクト!
鳴り響く「Born to be wild」と「ハングオン」のアレンジ!
ハイスピードで展開していくバカ演出の数々!!
かつて衝撃を受けたゲームに、歳を重ねて再び向き合える幸せをこれほど強く感じたのは
大袈裟ではなく、今回が初めてかもしれません。


「バック・トゥ・ザ・アーケード」さんは時間制で、入場料を支払えば制限時間内は遊び放題というシステム。
これを幸いとばかりに、2時間近く「クールライダース」を遊び倒しました。






なお、今回はメンテナンス中とのことで店内の様子は写真に収めずにいたのですが、
プロップサイクル」や「デイトナUSA2」、「チェイスH.Q.」など
今となってはなかなかプレイが難しい体感ゲームガンシューティングが、店内には所狭しと並べられています。
稼働しているもの以外にも、倉庫に20台ほど出番を待つマシンがあるとのことで
目当てのゲームを狙って行くも良し、リピーターとなって入れ替わりごとに邂逅を楽しむも良し、といったところですね。









「クールライダース」は自分にとって思い入れの深いゲーム、とは冒頭に書いたとおりですが、
久しぶりのエンディングに到達するまでは、結構な苦戦をしました。
当時は簡単なゲームという印象だったのですが……。長い期間が空いていると、記憶と違う部分も当然あります。
今プレイすると、2〜3回クラッシュすればクリアが絶望的になるほどタイム設定がシビアで
何度もゴール直前でリタイアの苦汁をなめさせられたり。



そしてもう1つ、記憶と違っていたのが、筺体そのもの。
「バック・トゥ・ザ・アーケード」さんで稼働している「クールライダース」は
「F1エキゾーストノート」筺体に入っているのですが
実は当時「デイトナUSA」筺体で稼働しているものもあったそうです。

これは別のところで撮った「F1エキゾーストノート」と「デイトナUSA」の筺体ですが
並べて見比べると、結構違うのが分かるかと思います。
当時プレイしてたのは、どっちだったのかなぁ…。









レトロゲーム、とりわけアーケードの大型筺体は保存もメンテナンスも難しく
どれだけ思い出があっても、今となっては簡単に再会できないのは、もはやご存じの通り。
そんな中、遊べる環境で数多くのマシンを公開されている「バック・トゥ・ザ・アーケード」さんの活動は
非常にありがたく、意義のあるものだと感じます。



大変な手間だとは思いますが、長く活動が続くことを心より祈ります。
また、絶対に訪れることを心に誓いました。
心の名作「クールライダース」をまた再び遊ぶために。
そして、今回の来訪ではしっかりと触れることができなかった
未だその魅力の全てを知らない、数多くのマシンたちと本気で向き合い、対話するために。